最初に雇う従業員が友人だからこそ、決めておきたいこと

query_builder 2026/09/22

社を立ち上げ、初めて従業員を雇う。

その相手が、以前からよく知っている友人や元の職場の仲間であれば、全く知らない人を採用するよりも安心だと感じる経営者は少なくありません。

「人柄も分かっているから大丈夫」
「細かいことは、働き始めてから話し合えばいい」
「友人だから、困ったときはお互いに助け合える」

そのように考えるのも自然なことです。

しかし実際には、友人や知人を雇う場合こそ、雇用を始める前の準備がとても重要です。

働きやすい会社にしたい、という社長の思い

最近、会社の立ち上げと同時に、友人や知人、元の職場の仲間、知人から紹介された方など、複数人を雇用する経営者からのご依頼が続きました。

皆さん、ご自身のサラリーマン時代の経験を踏まえ、

「従業員が働きやすい会社にしたい」

と、目を輝かせてお話しになります。

そして、詳しく伺っていくと、次のような言葉が出てきます。

「給与は、前の職場と同じか、それ以上は払いたいです」

「今は年間休日120日以上が当たり前ですよね」

「フレックスタイム制やテレワークができる会社にしたいです」

「全員、正社員ですよね。正社員というのは、派遣社員やアルバイトではないということですよね」

「みんなには、月給制で話をしてあります」

従業員を大切にしたいという思いは、本当に素晴らしいものです。

ただし、良い会社にしたいという思いだけで、給与や休日、働き方を決めてしまうのは危険です。

「この条件なら喜んでもらえる」で決めてはいけない

私は、少し話の腰を折るようで恐縮ですが、次のような質問をします。

「社会保険料を、会社が毎月どのくらい負担するか把握されていますか」

「その方が予想に反して意欲的に働かず、遅刻や欠勤を繰り返した場合、はっきりと注意できますか」

「注意するときに、その根拠となる会社のルールを示すことができますか」

そして、社長が考えている給与額を基に社会保険料などを試算すると、皆さん、一度無言になります。

「これ……会社も同じくらいの金額を負担するのですか?」

「どの会社もですか?」

給与を決めるときに考えなければならないのは、本人に支払う月給だけではありません。

会社負担分の社会保険料、労働保険料、賞与、有給休暇、健康診断、通勤費や備品などの経費も含め、年間でいくら必要になるのかを考える必要があります。

月給だけを見て「このくらいなら払える」と判断してしまうと、後から予想以上の負担に気づくことになります。

友人だからこそ、注意しにくくなる

友人や知人を雇う場合、雇用前は「何でも言い合える関係だから大丈夫」と思いがちです。

ところが、実際に雇用が始まると、その関係は少しずつ変わります。

社長は、

「昔からの友人だから、細かく注意するのは気が引ける」

「今さら条件が違うとは言いにくい」

と考えます。

従業員側も、

「友人なのだから、少しくらい融通を利かせてもらえるだろう」

「立ち上げから一緒にやってきた仲間なのだから、ほかの従業員とは違う」

という気持ちを持つことがあります。

これは、どちらか一方が悪いという話ではありません。

最初に会社のルールと労働条件を明確にしなかったために、お互いの期待にずれが生じてしまうのです。

その結果、仕事上のトラブルだけでなく、大切な友人関係まで失うことになりかねません。

「正社員だから安心」だけではありません

「正社員として雇います」と約束して雇用を始めた後に、

「思っていたより休みが多い」

「勤務態度が不真面目だから、辞めてもらいたい」

と考えても、会社の都合だけで簡単に雇用を終了できるわけではありません。

従業員に注意や指導をするときには、守るべき服務規律や手続をあらかじめ明確にし、本人に周知しておくことが重要です。懲戒処分を検討する場合にも、その種類や理由を就業規則などに定めておく必要があります。

また、賃金の計算方法や欠勤控除のルールが曖昧なままでは、欠勤した日の賃金をいくら控除するのかについても、根拠を説明できません。

友人同士の話し合いや、その場の「ノリ」で決めた条件では、会社も従業員も守れないのです。

一人目を雇う前に準備したいこと

従業員を雇う前に、少なくとも次のことは整理しておきましょう。

  • 業種や繁忙期を反映した年間休日カレンダーを作る
  • 給与、手当、賞与の基準を決める
  • 労働時間、休日、休暇、遅刻・早退・欠勤の取扱いを決める
  • 労働条件通知書を作成し、本人に明示する
  • 最初の一人を雇う段階から、最低限必要な就業ルールを整える
  • 社会保険料や労働保険料を含め、年間の人件費を試算する
  • 雇入れ時の健康診断など、会社に必要な手続を確認する
  • 経営者自身も、基本的な労働基準法や社会保険制度を確認する

常時10人以上の従業員を使用する事業場には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出義務があります。

しかし、10人未満なら何も決めなくてよい、ということではありません。むしろ、会社を立ち上げたばかりの時期だからこそ、最初の一人を雇う前に基本的なルールを整えておくことが大切です。

ルールを作るのは、従業員を縛るためではありません

私は、業種や会社の事情に合った年間カレンダーを作るところから始め、最低限必要な会社のルールを整理し、人件費のシミュレーションを繰り返しながら、給与や手当、休日数などを一緒に決めていきます。

そうして雇用をスタートした会社の社長から、

「あのまま雇用を始めていたらと思うと、ぞっとします」

「友人を失うところでした」

と言われたことがあります。

就業規則や労働条件通知書を作るのは、従業員を疑ったり、縛ったりするためではありません。

友人や仲間であっても、雇用後は「雇用主」と「従業員」という関係になります。そのことをお互いに理解し、安心して働き続けるためにルールを作るのです。

スタートしたばかりの会社を守るために。

社長を慕って入社してくれた人を、がっかりさせないために。

そして何年か後に、

「あの頃は大変だったけれど、一緒に会社をつくってきたね」

と、入社当時を懐かしく振り返ることができるように。

友人だから簡単に済ませるのではなく、友人だからこそ、最初にきちんと決めておく。

それが、会社と従業員、そして大切な人間関係を守ることにつながります。


はじめて従業員を雇う経営者の方へ

サワベ社労士事務所では、はじめて従業員を雇用する会社のための「雇用スタートパッケージ」をご用意しています。

業種や会社の事情を丁寧に伺い、年間休日カレンダーの作成、人件費や社会保険料のシミュレーション、給与・手当の設計、労働条件通知書や就業規則など、雇用を始めるために必要な準備を一緒に整えます。

「何から決めればよいのか分からない」
「友人や元同僚を雇うので、関係を悪くしたくない」
「提示しようとしている条件で、本当に経営を続けられるのか確認したい」

そのような段階から、ご相談いただけます。

雇用を始めてから困るのではなく、雇用を始める前に、会社と従業員の双方が安心できる土台をつくりましょう。最初の一人を雇うことが決まったら、ぜひ一度ご相談ください。


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株式会社エルシード

住所:静岡県藤枝市藤枝4丁目2−2

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